山口のショップDegreeがオープンして1ヶ月以上が経ちました。
多少の取材はあったものの、DMも出していないにも関わらず,お客さんは集まり,オープン間もない割には売れはしているそうです。そして,これくらいになると何が売れて,何が売れないかがはっきりしてきます。
僕も電話などでアドバイスはしているものの,基本的にはオーナーのお店ですからあくまでオーナーの意思でお店を存続させていかなければなりません。ただ,電話で聞いている話にはブレが見え始めています。
僕はメーカーはやっていますが,お店は持った事が無いのでこんな事言える立場で無いかもしれません。もし僕がお店をやったら、ブレない事をしたいです。
僕がオーナーさんと初めてお店の話をした時,近隣のお店の節操のなさを批判しながら僕に夢のようなお店の展開を語っていました。僕は客観性を失っている部分はまずいと思ったので,考え方を軌道修正しながらイメージする2つの大きな商品構成(アート系とカントリー系)の融合をし,どうにかオープンしました。
しかし,オープンすると(最初から分かってましたが)アート系は売れず,カントリー系は動く。現実性があって値段も手頃なのだからしょうがありません。そしてオーナーさんはお客さんの嗜好や顔色を見ながら僕に電話で「こういったお客さんが多いので,これを入れたらどうでしょう」「これが売れるからバリエーションを増やして商品割合を高くしたい」と言うようになってきました。既にオープン前のあの理想ではなく,現実をかなり見始めています。
一つは恐怖感があるように思います。昨日は0だった,今日もまだ0円。と(実際そこまでは無いようですが)赤字が膨らんでいく恐怖が襲ってきて,安定を求めるために日銭計算をするようになります。それが悪い訳ではありませんが,結果を見ると多くのお店は皆商品構成が一緒に見えてきます。そりゃ,売れるもので分かりやすいものがそんなに世の中に溢れている訳はありませんから,バッティングしていく事は必然です。はっと我に返った時、あれほど批判していた近隣の雑貨屋さんと同じ,バラエティショップになっているでしょう。僕もそうだけどお客さんはみんなわがまま。自分が買いたいものが無ければ買わないのに,売りたい気持ち見え見えのお店は嫌だと思ってしまいます。それに流されず,自分の意志をどこまで持てるかが重要です。
最近は投資ファンドが様々な分野の企業やブランド立ち上げに出資する事が多くなっています。ただ,殆どの人はその分野の知識が無い事が多い。数年前もありましたが,大手アパレル企業から独立し,投資会社出資のもと新ブランドを立ち上げましたが,半年で倒産しました。大きな理由は出資を止めた事。ブランド言うのは明日からバカ売れするなんて事はまあ殆どありません。どこどこの有名ブランドが作ったセカンドラインだとか,有名店長のお店だとかであれば話は別ですが,世の中に初めて登場するところがブランドを確立するのに大体3年かかるといわれています。あの今では業界一位のユナイテッド・アローズですら立ち上げ3年は赤字だったそうです。でもこの特性を知らない投資家たちはすぐに結果を求めます。その結果が倒産になったのです。
言うのは簡単だけど僕は『辛抱強さ』が必要だと思います。初心をブレることなく,貫いたときにこそ本当の顧客がついてくれるように思います。誰もが出来る事ではありません。でも,山口のオーナーさんは別に経営もやっており,家族を養うには充分なくらいの年商を得ていますから,体力は充分あるはずです。だからブレずにがんばって欲しいと思います。
幸運な事に,先月イギリス留学から帰ってきた娘さんが雑貨好き。もちろんオーナーの奥さんも雑貨は好きな人です。今,売上に繋がっている客層が3つぐらいあるそうで,その中の2つが娘さんと奥さんの層なのです。彼女達はお客さんの心理もちゃんと分かりますから,オーナーのバイイングの暴走を止めているそうです。そしてこの2人はとても辛抱強い。変な方向に行きそうでも軌道修正してもらえそうです。
ちゃんと辛抱強く続けていたらそのうち山口でもアート系の商品を買ってもらえるお客さんはついてくると思います。だから,大変だけどがんばって欲しいですね。