今日から山口入りしました。山口に来るのはこれが初めてです。
山口といえば下関のフグ(地元ではふくと言います)、古くは壇ノ浦の戦いや毛利公、雪舟、山頭火や中原中也などが有名でしょうか。そういえば安倍総理の地元でもありますね。D-BROSのW邊さんの実家もオーナーさんの知り合いだそうです。
山口に行く前に、いくつかの情報を聞いていました。
●地方都市の特徴は自家用車が大きな移動手段。中心街よりもむしろ郊外型の大型店舗(駐車場がある)に人が集まるが、山口市は中心が活性化している。
●その理由として、昔から専門店が多く郊外に多い複合店と差別化を図れるため、根強い支持者が多い。
●古くから文化レベルが高く伝統を重んじ、町家など街並も古風。(僕自身は岡山の倉敷や京都の祇園、飛騨高山なんかを想像)
●洋服などは福岡に行って買う事が多い。(新幹線で30分くらい)
で、1日街を見て回ったんですが、その事前情報とのギャップに頭を抱えてしまいました。現実はこうです。
●地方都市特有の郊外集中化が顕著
●最も栄えているというアーケード通りは1/4が閉店状態、通りにある最も大きなスーパーは11月に撤退
●平日とはいえ、夕方の買い物で活性化する時間でもおばちゃんすらほとんど見かけない。夕方2時間通りに滞在してすれ違った人は20人程度
●いわゆる箱ものがたくさん。それもほとんどが機能していないか破産済み
●ところどころ古い家屋は残っていますが、通りを見てもパラパラ(ただ、蛍祭りで有名な川縁は多少保存されている)
●オーナーさんが新しく店舗を出す通りには古い家屋は皆無
●さらに、町家再生計画という商工会の助成金で開業補填するにも関わらずオーナーさんの物件はプレハブ構造(それをなんちゃって町家風にするだけ)
どうしよう、と思ってしまいました。
聞くところによると事前の情報は、自らが足で得たものではなく、商工会の情報だそうです。税金じゃぶじゃぶ使っている人たちにマーケティングデータを求めている方が間違ってます。
世の中にはどこにあっても繁盛するお店はあります。例えば有名ラーメン屋さんとか。
山口にもここのお店のものしか食べないっていうパン屋さんやケーキ屋さんもあり、近隣の街や他県からも来るところはあるそうです。が、インテリア雑貨でそんなに注目されるような事が出来るでしょうか? 地方でもオーナーの個性が光り、自ら海外買い付けなどに行ったり、ヴィンテージものをセレクトしたり東京からも買いにいくお店は無い事はありません。ただ、今回のオーナーさんはギフトショーで業者を見つけるのが限界。これでは、注目されるようなお店になるとは思えないのです。
最も頭を抱えたのが、オーナーの情熱の部分です。
出張の前に「限られた時間しかありませんから、めぼしい商品をメーカーのカタログから選んでおいてくださいね」と言っていたのですが、いざ「さあ、はじめましょうか」となると、宿泊先で段ボールの中からメーカーから送りつけられた未開封の封筒を出しては、開封してパラパラ選んでいる始末。これでは何時間かかるか分かりません。しかも付箋すら用意してません。結局、選んだ商品は段ボールの中の数冊、紙袋で持ち込み充分です。何も重い思いをして何十キロもある箱を持ってこなくても済むんです。さらに設計をお願いする方の事務所へ行っても、オーナーのイメージや想像出来る素材を用意してないんですから、僕も建築士の方もどうしたらいいか分かりません。僕たちの好きなようにやれってことでしょうか?リサーチも冒頭のお粗末さ、しかもタダでさえ時間がないのに「私はお風呂が長いんで...」と2時間もかけている。
こんな状態なので、今日1日の4/5は僕の説教で終わってしまったようです。僕は結構ズケズケと本音を言うタイプなので、反省してもらいたい気持ちも込めて「本気さが感じられないなら辞めますよ!」とか「お客さんや協力者に対して失礼じゃないんですか!」なんてキツい事も言ってしまいました。食事の時もそんな事言うので、彼も喉を通らなかったようでかわいそうでしたが、最後の頼みの綱は本人の気持ちなんですから始まらないうちに激を飛ばしておいた方がいいかと。
でも、そうやっているうちに地方の闇の部分が見えてきた気がしました。全く!この人は!と思っていたんですが、このオーナーさんはむしろ地方によく居る善良な市民なのかもしれません。他人事に感じ、自分たちの利権ばっかりを考える地方自治体や談合する建設業者。危機感の無い情熱を失った街の人々。このオーナーさんを通して、その背後にあるブラックホールを垣間みた感じがします。
僕にとっては1ショップを立ち上げるのを協力するという事だけではなく、この闇の部分に向かう責任の重さを痛感しています。