ここ最近暖かかったので、コートを脱いで外出する事が多く、21日もそんな気分で外出。でも、雨もあって相当寒くおかげで風邪をひいてしまいました。そんな引きこもりの数日間で、先日買ってあった雑誌を何冊か読んでました。その1冊が上の写真の「
映画秘宝」です。
市川崑監督が亡くなった際にここで書こうと思っていたのですが、あまりにありすぎてどこから書いていいか分からず、結局時間が経ってしまい書きそびれました。そんな時「映画秘宝」で
木枯らし紋次郎の表紙を発見、即買いしてしまったのです。
木枯らし紋次郎は僕が生まれて1番最初に市川作品に触れたTV番組であり、監督というものを知った最初の作品でした。
ウチは寿司屋をやっていて、子供の頃は日曜日となると結婚式場なんかから大量に注文が来ていたので土曜の夜からはじめないと間に合わず、僕も簡単な作業を夜中まで手伝っていました。
テレビをつけながら作業をしていて、土曜の夜、「
8時だョ!全員集合」が終わって、その後「
キイハンター」を見て、その後だったか「木枯らし紋次郎」をやっていました。幼稚園の頃よく風呂敷を羽織り、ざるをかぶり、長い棒をくわえては真似をよくしたんですが、そんな深夜の番組を同級生がわかるはずありませんでした。
真似するくらい好きだった紋次郎のどこが良かったかというと、まず主題歌。上條恒彦の歌う「
だれかが風の中で」は、当時フォークが最先端だった時代に、しかも時代劇で、オープニングのストップモーションを使う映像とともに、凄くかっこ良かった。
その後、似たようなフォークを使う時代劇が増えましたね。
あと、リアリティがあった。よくチンピラの殺陣が出てくるんですが、そういった人は剣術なんか学んだ事が無い。だから刀を闇雲に振り回す感じ、そして次々に切り倒されていく仲間を見て恐怖を感じていく。今の時代劇を見ても、殺陣は誰一人として死ににいく事に恐怖を抱いていないのはおかしい。子供ながらにそんなことを思ったのです。そして何よりも紋次郎の人間らしさ。「あっしには関わりがねぇこって」といいながら、ほっとけないとても人間臭い人物像。「
少年チャンピオン」で当時読んでいた手塚治虫の「
ブラック・ジャック」にとても似ていると思いました。
その後、「犬神家の一族」を小学校の頃見る事になるんですが、その頃は撮影テクニックや演出、編集なんかに既に興味があったので相当な衝撃でした。興味がある人はじーっと見直してみてください。映像のところどころにピンボケやボツカットが一瞬だけ差し込まれていたりします。僕もたまに見返すとその度に新しい発見があります。何よりもいいのはライティング。光と影を巧みに使ってる。これは市川作品全般にいえることですが。口喧嘩の重なりも好きです。棒読みにこだわった小津映画と比べると面白いです。そして
ルパン三世なんかの音楽をやっていた
大野雄二の音楽もいい。2006年に全く同じカット割でセルフカバーした「犬神家〜」は試みとしては面白かったけど、オリジナルの比ではないと思います。
この「犬神家〜」以降、市川作品を意識して見たのですが、好き嫌いはある中やっぱり「
悪魔の手毬唄 」「
股旅」「東京オリンピック」は最高でした。特に「
東京オリンピック」は凄かったです。どうして競技中にあんな映像が撮れるのか不思議でした。市川映画にはズームアップの場面が多くありますが、そのほとんどが望遠で遠くから撮っている。普通は遠くから撮るときは引きの映像が当たり前なんですが、だけど、それをするおかげで背景がボケて主体がものすごく引立つんです。これを撮影場所など制約の多かった東京オリンピックで編み出したそうです。
そして、90年代に入って渋谷系の人の中で再評価が高まり、見る事が出来た「
黒い十人の女」や1966年のライオンの歯磨き粉のCM。
市川監督というと、いつも新しいものを取り入れ、実験を取り入れている印象がとても強い。80年代以降の作品はあんまり好きじゃないけど、たまにTVで放送しているのを見ると「じいさん、あいかわらずやってるなあ」と感心させられます。
90歳まで前へ行こうとしていた気持ちはいつも見習わなくては、といつも思っています。風邪で寝込んでる場合じゃないね。